多角的な視点で病気を見つめる、こどもを守る Staff Interview
多角的な視点で病気を見つめる、こどもを守る
医長 村岡 正裕
薬剤師の資格を持ちつつ、医師の道を歩んできた小児科医。アメリカでの研究留学を経て、多角的な視点でこどもの健康を支えています。研究者の冷静さと臨床医の温かさを大切にしているからこそできる仕事についてお伺いしました。
小児科医を目指す随分前から、生命科学の研究に興味がありました。ちょうど中学生の頃に再生医学という言葉が世に出始め、高校では生物学が好きだった私は、まず薬学部で研究の基礎を学ぶ中で、より直接的に人の治療や健康に貢献できる研究への興味を持ち始め、薬学部卒業後に学士編入学という形で医学部に進みました。研究者でなければ保育士になろうと思っていたので、臨床医となりえる立場になった身として志望先は小児科一択でしたが、そもそも小児科医になるのか、あるいは基礎医学の研究者になるのか迷いました。結局は二足の草鞋を履こうと、当院赴任前はアメリカ、ロサンゼルスでの研究留学を経験しました。
小児科医を目指したのは、こどもなのに辛い、痛い、苦しいといった経験を強いられてしまう、病気という不条理さが嫌いだからです。こども達が「偶然の悪戯」によって、時にはたった一つの遺伝子が変異したことが原因で、また時には見えないほど小さな病原体を吸い込むことによって、生死を左右する病気になり得ること自体が理不尽です。偶然の悪戯というには残酷すぎる結末は、もってのほかです。これは私の勝手な思いですが、こども達には、無邪気に笑い、気が済むまで泣き、元気に遊び、何かに熱中したり、恋をしたり、悩んだり、時には何もかも嫌になり、それでも周りの人達に支えられて頑張ってみたり、その中で人の強さや弱さを学んだり、して欲しいのです。
小児科医として、戦って治せる病気であれば、全力で向かっていく。病気の発症自体や重症化を予防できる方策があるならば、科学的にメリットとデメリットを検証した上で利用していく。根本的な治療ができない病気だとしても、日常生活が円滑に過ごせるように上手く付き合えるようサポートする。病気にも色々とありますが、こども達や御家族と一緒に、臨床医として、また研究者として、これらの不条理や理不尽に対峙していくことができる小児科医という仕事は、私にとって稀有で幸せな職業です。
あまりきれい事ではない、ある種の泥臭い言葉の響きも含めて、「反芻」という言葉が好きです。本来の反芻という言葉の意味は、牛などの草食動物が食べ物を一旦飲み込み、それをもう一度口に戻してよく咀嚼してまた飲み込む、ということを繰り返すことです。私の場合は勿論、頭の中での話ですが、どのような状況でも熟慮したこと、頑張ったこと、時間がかかったこと、の結果が正しいことだと思うのではなく、行ったり来たりして繰り返し考え続けることが医師として大切なことだと思っています。考え動き出す前に、よくよく計画を練る必要がありますが、ひとたび始まったら懸命に反芻しながら、柔軟に2歩進んでは1歩戻り、あるときは同じところをぐるぐる回り、気がついて振り返ったら良い結論ができていました、というくらいのほうが、私の場合はいい結論に至れるような気がします。
こども達にとって最善の治療を選択していただけるように、御家族への説明を丁寧に、同じ事でも繰り返してお話しするように心掛けています。時に、こども達にとってはベストでも、ケアする御家族にとっては難しかったり、負担が過ぎたりすることもあり、そうなると巡り巡って結局はこども達の為にならない、ということも起こりうるため、御家族の希望や利便さなども可能な限り考慮にいれて、その上で1番いい治療や検査の選択肢を提供していけたらと思っています。また、お薬を処方するにあたっては、最小限に留めつつ、各々のお薬の意味をご理解いただけるよう努めています。
一般小児科としては加賀市内で唯一の入院できる施設、出産できる施設として、その役割を果たすべく近隣の小児科の先生方や当院産婦人科の先生方との連携を大切にしています。また、採血検査や尿検査、細菌培養検査、CT、MRI、エコー検査、脳波検査など、一般的に必要とされる検査はすべて当院で随時施行可能です。オールラウンドにお子さんを診察し、必要なお子さんに関しては当院で入院治療をさせていただくと同時に適宜、高次治療が可能な小松市民病院や金沢エリアの連携病院への再紹介も検討します。
紹介受診重点医療機関としての当院の性質上、予約外の飛び込み受診が比較的少ない分、一人一人のお子さんに対して丁寧に診察させていただけることは大きな魅力と思います。設備面では、広々とした外来待合室があるほか、健診等で来院されたお子さんが感染症のお子さんと同じ空間でお待ちいただくことがないよう配慮された待合スペースもあります。
入院治療に際しては、当院は全室個室設計の病室を備えており、特に保護者の方の付き添いをお願いする小児科の入院において、プライバシーが保たれ周囲を気にすることなく過ごせる個室を追加負担なくご利用いただけることも魅力の一つです。また、外来、病棟ともに、こどもが好きな優しい看護師さんが多く、お陰様で暖かく和やかな雰囲気で診療させてもらえることは、小児科医としてとても有難く思っています。
小児科で担当する新生児から中学生までのお子さんは、身体的にも精神的にも人生の中で最も変化のある年代であると同時に、この地域、ひいては世界の未来を担う貴重な方々です。成長していくにあたって何かとトラブルはつきものですが、それが重篤な病気や怪我にならぬよう、小児科がお手伝い出来たら幸いです。軽症であれば通院で軽快することが多いものの、時にはしつこくなったり、急に酷くなったりするのがこどもの病気です。ご心配なときは、かかりつけ医の先生の診療所または当院へお気軽にご相談ください。