地域の健康を骨から支える Staff Interview
地域の健康を骨から支える
副院長 永嶋 恵子
映画の台詞「整形外科は治るから」に感銘を受け、QOL向上への関心から整形外科医の道へ進んだ永嶋医師。命に直接関わる科ではないが、生活を支え、再び歩ける喜びを届ける。そんな”整形外科の本当の価値“と、地域医療の最前線で奮闘する日々。
先生が歩んできた道と、そこに込められた想いに触れてみてください。
学生の頃、薬師丸ひろ子さんが整形外科の研修医を演じていた映画を観ました。彼女の役は血液が苦手な医者の役でしたが、それでも手術がある整形外科を選んだ理由が「整形外科は治るから」ということでした。その台詞がすごく印象に残っていて、納得したのを覚えています。
実際に医学生になり、いろんな科を見ていく中で、外科系に進みたいという気持ちが強くなりました。一方、当時はまだ、外科系志望の女性医師の選択肢は少ないのが現状でした。特に整形外科の女性医師は全国的にも少ない時代でしたが、金沢大学整形外科教室に受け入れていただいたときは本当にうれしかったです。
整形外科は生命に直結する科ではありませんが、患者さんのQOL(生活の質)に直結する科だと考えています。私が整形外科医を目指していた当時、QOLという概念が少しずつ浸透してきた時代でした。命に直接関わらなくても、患者さんの生活を良くする、大切にするという考え方が広まってきました。そして、平均寿命が延びている一方で、健康寿命との乖離が問題になってきました。そういう状況下で、健康寿命を延ばすために整形外科が果たせる役割はとても大きいと感じるようになりました。今振り返ってみれば、整形外科を選んで本当によかったなと思います。若い頃はそこまで深く考えていたわけではないんですけどね。
診療の中で心がけているのは、「この患者さんにとって一番良いのは何か」を常に考えることです。整形外科は命に直結する科ではないので、同じ疾患でも患者さんによって最適な治療法は異なります。手術をすれば痛みは取れるかもしれません。ですが、それによってこれまでの生活ができなくなってしまうかもしれません。そういったバランスを考えながら、変形性関節症に対して、関節内注射や人工関節置換術といった治療方針を決めています。正解が一つじゃない、それが難しくもあり、やりがいでもあると感じています。
寝たきりになる原因として、1位は脳卒中、2位は認知症、そして3位が骨折(高齢による衰弱を除く)となっています。整形外科は、まさにその3位をどうにかできる科です。骨折によって寝たきりにならないためには、患者さんにできるだけ早く手術して、早期離床と、リハビリを始めるということがすごく大切になってきます。この方針は厚生労働省にも認められていて、48時間以内に手術をすれば加算も認められています。当院での、手術までの平均待機期間は2.4日と全国平均の4.0日と比べても、とても短いです。
もちろん、私一人ではできることには限界があります。他の診療科の先生、看護師、リハビリスタッフなど、多職種の連携があってこそ成り立っている医療です。
加賀市医療センターの整形外科の魅力についてですが、ここは加賀市で唯一の急性期病院で、多くの救急車を受け入れています。特に外傷には早期対応が求められるので、その体制が整っているのが強みです。総合病院なので、他の診療科の先生方も協力的で、バックアップ体制がしっかりしていますし、安心して治療を受けていただけると思います。また、365日体制でリハビリを提供できる点も大きな特徴です。
整形外科の治療技術も年々進歩していて、昔と比べると、骨折をしても歩行能力が大きく落ちることは少なくなってきました。もちろん、患者さん自身の頑張りが大切ですが、先ほども言った通り、骨折した患者さんに可能な限り、早く手術を受けていただくことが重要になってきます。できる限り、骨折前の生活に戻ってもらいたい、そういう想いで医療スタッフ一同一丸となって日々の診療に向き合っています。
最後に、これを読んでくださっている皆様にお伝えしたいのは、加賀市では高齢化が進んでいて、特に女性は骨粗しょう症が原因で骨折する方がとても多いです。だからこそ、骨折を防ぐために、骨密度の検診を受けて、必要なら治療をする。そういった「予防」がとても大切だと思っています。当院の健診センターでも人間ドックにて骨密度の検査を行っておりますので、是非活用していただければ幸いです。
これからも、一人ひとりの患者さんが「元の生活に戻れる」ことを目指して、整形外科医としてできる限りのことをしていきたいと思っています。