Study Meeting
病歴を特に重視した診断推論や画像読影(腹部を中心)などを研修医と共有します。
第8回 | 2020年3月17日(火)17:00~ 『研修医/全職員のためのリハビリテーション入門』 担当 岸田医師 |
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加賀市医療センター第8回研修医症例検討会を開催しました。
新型コロナウイルス流行の影響で院内研修会等も制限され、一度延期していましたが、今年度で発表者および指導医が異動予定でもあり3月中に開催の運びとなりました。
今年度最後となる第8回目は、4月より金沢大学へ異動される初期研修医1年目 岸田 晟利 先生が『研修医/全職員のためのリハビリテーション入門』の演題で発表しました。今回も複数診療科の医師に加えて、看護師、検査技師、薬剤師、放射線技師、事務担当者など多職種に渡る計 44名のスタッフが参加されました。
「非専門領域における達成目標は学生、研修医、指導医全て同じ」というコンセプトのもと、参加者全員が学びを深めることができました。冒頭に述べましたが、院長や多職種のスタッフが参加し"続ける"研修医カンファレンスが行われている教育病院は稀有であると思います!
今回は誤嚥性肺炎の症例をもとに、整形外科志望の岸田先生からリハビリテーションの概念、ADLの評価法、医師としてのリハビリオーダーの考え方などをわかりやすく解説して頂きました。
次いで、症例に関わったPT、OT、STの3名から経過と、自身の職種がどのような役割を果たしているか、解説して頂きました。
その後、高熱を呈し酸素投与を要する状況の肺炎症例に対するリハビリ早期介入の是非について、数名の医師、リハビリ担当者とでディスカッションを行いました。リハビリテーションに意欲的でない患者さんに対するアプローチについても具体的に解説して頂きました(スポーツ観戦が趣味の方に対して、テレビで放映されている時間帯を狙ってリハビリ担当者が訪室する、など)。
リハビリテーションを系統的に学ぶ機会があった医師は少ないだろうと思われます。
今回、病院購入した数冊の関連図書や、本カンファレンスでのディスカッションを参考に、参加者それぞれが学ぶ機会を得ました。
なお今年度末で、カンファレンスの立ち上げと運営に携わってきた鈴木が異動となりました。
改めて、本カンファレンスを振り返ります。
従来、カンファレンスは3部構成で進めてきました。
① 研修医が経験症例をプレゼン、② 研修医が関連事項について勉強し尽くした内容を講演、➂ 各分野の専門家へ質問・コメント頂く、という流れです。①は研修医自身がモチベーションを保つため、②は研修医に学び方を学んでもらうため(魚を与えず魚の釣り方を体得してもらう)、➂はカンファレンス終了時に未解決の問題を残さないため、と考えており、どれが欠けても成立しません。
新たな企画を立ち上げる際には、ドラッカーの言う"顧客"が誰かを意識する必要があります。
当院の特徴として、コメディカルスタッフが大変勉強熱心で、研修医のためのカンファレンスにも積極的に参加して頂いてきました。
指導医も同様で、若手からベテランまで、あらゆる診療科の医師が参加されます。
参加者のニーズ、知識レベル、モチベーションが多様な中、上記の形式で継続し、コンスタントに一定の参加者を得られたことは大変嬉しく思います。
往々にして、多くの研修病院でのカンファレンスは回を追う毎に参加者は減っていくものです(研修医も同様)。
病院全体として研修医教育に参加し、また参加することで各スタッフ自身の教育にも繋がる、という文化の醸成を目指してきました。多少は貢献できたかと考えております。
指導医としては、原則として裏方に徹しましたが、担当研修医には地味にも思える陰のマネジメントが重要であることを見てもらったつもりです。
具体的には、半年~1年計画で部屋の予約、1ヶ月以上前に担当研修医と症例およびテーマの選定、同時に出席を依頼する専門医へのアポイントメントが初期段階です。内容についてどこまで介入するかは研修医個人の能力にも依存しますが、スライド枚数や発表時間、概要の提案と関連書籍・文献の紹介までは必ずコメントしてきました。細かい内容は専門医と詰めて頂くことが多かったですが、研修医自身に考えてもらう最大の課題として「勉強し尽くしたことにより、何がわかって何がわからないか」を整理するよう依頼しました。勉強を進めれば進めるほどわからないことが増えていくのが常ですが、最終的に"専門医の壁"が立ちはだかり、越えられないことに気付くはずです。ここまで勉強し尽くした後に、専門医へ聞きたいことを考えてもらっていました。遅くとも1週前までに質問事項を決定してもらい、再度担当研修医と専門医とで話し合いをして頂きました。必要あれば、話し合いの場に立ち会って、補足説明しました。
以上、"ウラ"の微調整を踏まえて、参加者全員に比較的満足頂けるカンファレンスを継続できたと考えております。
最後に、改めて第8回までのテーマと参加頂いた専門家をまとめておきます。
第1回:溶連菌性咽頭炎 耳鼻科
第2回:急性心筋梗塞 循環器内科・検査技師(生理機能)
第3回:急性虫垂炎 外科
第4回:大腿骨転子部骨折 整形外科・放射線技師
第5回:尿路結石 泌尿器科
第6回:子宮外妊娠~女性の腹痛 産婦人科
第7回:熱性けいれん~小児救急全般 小児科
第8回:誤嚥性肺炎に対するリハビリテーション PT・OT・ST
医師に限らず、多職種が参加する当院ならではのカンファレンスが継続できたことに改めて感謝申し上げます。
来年度の初回は、新2年目の森永先生担当でACP:アドバンス・ケア・プランニングをテーマとした発表を計画中です。
皮膚科や眼科救急、ポリファーマシーを薬剤師ととも考える、なども新たな試みとして興味深いかと思われます。common diseaseを中心に、研修医とともに参加者全員が学びを深める、当院独自のカンファレンスが形成されていくことを期待致します。
今後とも、加賀市医療センターの研修・教育へ御協力の程、宜しくお願い申し上げます。
文責:内科・リウマチ科(研修担当) 鈴木 康倫